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北村薫編    「謎のギャラリー 愛の部屋」(新潮文庫)

色んな愛の形を描いた中編、短編を北村が編集してだした作品集。北村の気質がよくでていて、一筋縄ではいかない、特異な作品ばかりが収録されている。

 あの「長靴をはいた猫」で有名なガーネットの「狐になった夫人」が面白かった。

巻末で北村と宮部みゆきが対談しているが、ガーネット夫人は内気な人だったが、ガーネットに妻が狐になる話を書いて、書いてとせがみこの話が誕生したらしい。ところどころに、挿絵がはさまれているがこれは夫人の作品だそうだ。この作品最後に主人公が妻だった狐を猟銃から守ろうとしたが、妻は撃たれ死ぬ。主人公も瀕死の重傷を負ったが、その後全快して大変長生きをしたと結ばれている。ガーネットは90歳近く生き(当時は超長生きにはいる)をしている。自分のことを言っているのだろう。

 そのガーネットの作品。

 テブリック、シルヴィア夫妻が雑木林に散歩にでかける。最初は楽しく散歩をしていたが、猟銃を持った猟人が犬を連れて現れる。するとシルヴィアが散歩をするのを怖がり、散歩をためらう。それを無理やりテブリック氏は引っ張り散歩を続ける。シルヴィアの掴んでいた手の感触がどこかおかしいなと思って振り返ると妻が狐に変身していた。

 狐になった妻をテブリックは、人間だったとき以上の愛情をもって暮らす。最初は、シルヴィアもテブリックの愛に応えようとするが、段々本来の狐になってゆく。横で寝ていたものが、部屋の隅で寝るようになる。うさぎや、飼っていた小鳥を食べてしまう。

 危険だから家の外へ出ることを禁じていたが、シルヴィアは耐えられず、家から逃亡してしまう。テビリックは毎日のようにシルヴィアを探しにでるが、どんな狐をみても、シルヴィアに見えてしまう。完全に狐シルヴィアに狂ってしまう。

 やがて林の中で、シルヴィアに出会うが、そのときシルヴィアは5匹の子供を引き連れていた。この時のテビリックのシルヴィアの父親に対する嫉妬と、たかが狐じゃないかと納得しようという気持ちの搖動の描写が秀逸。

 更に、5匹の子供に教育を施さねばならないと思い、どの学校がいいか思いめぐらすところが、人間の生き方と重ねあって実に面白い。そして、人間より狐の一生のほうが、楽しいのではないのかというところまで到達してしまうところが、強烈なブラックユーモアになっていて、笑いとともに、胸にズシンと応える作品。

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| 古本読書日記 | 05:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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