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北村薫     「リセット」(新潮文庫)

時と人をテーマにした作品、「スキップ」「ターン」に続く最後の仕上げ作品。遠い昔、青春時代に恋をして別れた人とは、当たり前だが、それから今までの数十年間会ったことはない。ということは、その人の姿は二十歳のころと今も全く変わっていない。

 数十年の間、ごくまれに、前からやってくる人が、或いはどこかのレストランで別テーブルで食べている人が、別れた人ではないかと思われるほどそっくりな人に出会う。そして、その度ドキっとして、その人を見る。

 ゆっくり考えてみると、そっくりさんは、二十歳のころのままの人。あれから数十年もたっているのだから、その人だって年齢を重ねたはずで、姿が二十歳のままではありえない。
自分もその時代に戻ったと錯覚して、あの人かもしれないと思ってしまう。

 この作品の主人公真澄は、友達の八千代が連れてきた、修一に恋心を抱く。そのきっかけとなったのが、彼から借りた「愛の一家」という小説。恋し、憧れだった修一は戦争にとられ、真澄が軍需工場で海上飛行艇を作っているとき空襲になり、真澄は惨禍を避けようと逃げて生き残ったのだが、修一は逃げることが許されず、空襲で亡くなってしまう。

 戦争が終わり10年のときが過ぎて、真澄は修一ではないかと思われる和彦という青年に合う。まして彼の読んでいる本があの「愛の一家」だったから猶更修一ではないかと信じ込む。またあのころに戻って時間がリセットされる。しかし、そうはいかない。

 時はとどまることはなく、進行する。

真澄の印象的な言葉が心に残る。
「親は子供たちのために、素敵な時代を手渡そうとするものでしょう。わたしたちの親の世代は、強い日本を渡そうとしたのね。<力>を。ところがうまくいかなかった。それを見ていた子供が、今親になった。だから今度は、豊かさと文化を手渡そうとしている。」

 世の中は、世代から世代、何かを手渡しながら動いているのだ。だから、リセットはできない。でもリセットしたい、或いは錯覚していたい気持ちは本当によくわかる。あそこからもう一度やりなおせれたら。

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| 古本読書日記 | 05:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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