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北村薫    「八月の六日間」(角川文庫)

私が会社勤めをしていたとき、毎年必ず有休を連続でとって、スキューバダイビングにゆく女性社員がいた。海に潜りに行くのは、同好の志が集まって必ず何人かが連れ立ってゆくか、目的地にいつも何人かがいて、グループで楽しんでいるのが普通だった。

 山歩きや登山ももちろんグループで、ツアーでというのもあるが、結構単独で行動する人が多い。しかも、この物語のように単独で女性が山登りをすることが結構ある。

 41歳になる主人公の私は、出版会社で副編集長をしている。同棲したカメラマンとうまくいかず、別離する。パワハラの編集長と編集者の間にたって、心労や苦悩の連続。

 よく経営成功者が最後に自伝のような本を得意気になって出版する。決まって書いてあることは、自分もたくさんの失敗をした。しかし、それにめげたりすることはなく常に挑戦を繰り返し成功した。つまり、失敗を恐れてはいけない。常に創造と改革を突き進めと。

 しかし、北村はこの作品でも言うが、人生での失敗、また元に戻ってやりなおす、そんなことは殆ど不可能、その通りだと思う。

 山に独りででかける。山は一人で歩いている時間が殆ど。歩きながら、失敗や挫折を思いなおす。泣きたかったら、道をはずれて思いっきり泣けばいい。山小屋でせせらぎの音に耳を澄ませながら、悔しさを徹底して思えばいい。時には、同じ思いを抱えながら山にやってきた人にも出会う。お互いに自分の困難を語り合うことはあまりできない。でも、少しの会話で、同じように辛いことにぶつかってしまった人がいることを知る。

 そして、山をおりて、また一般社会へかえっていく。取り返しのつかない人生になってしまったかもしれないが、そこからまた歩みだそうという力を山ガールに山は与えてくれる。

 それにしても北村の登山の描写はすばらしい。ところが北村は山登りの経験は全く無いそうだ。この筆力には驚嘆せざるを得ない。

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| 古本読書日記 | 05:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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