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北村薫   「ひとがた流し」(新潮文庫)

女性同士の絆、本当の友情とはどういうものかを深く追求して感動的な物語を北村は完成させている。

 アナウンサーの千波、作家の牧子、写真家の妻となった美々は高校時代からの親友。それぞれ異なった道を歩み、多忙ななかなかなか出会うことは少なくなったが、熱い友情で50歳になった今でも結ばれている。

 千波が乳がんで手術をしたものの回復せず、余命が少ないことを宣告される。美々の娘の玲が入院している千波を見舞いにきたとき交わした言葉が強い印象に残る。

 「職場にも、知り合いは大勢いる。<わたしが生きていたほうがいいですか>ってアンケートをとったら、多分殆どの人がイエスと答えてくれる。―――でも、そういうこととは違うんだ。胸の内から湧き出る、本当の、ぎりぎりの真情をこめて<生きていて>と願ってくれる人なんて、誰もいるわけはない―――と思ってた」
 「牧子おばさんや、うちの母もですか?」
 「そりゃあ、悲しんでくれるとは思うし、泣いてくれると思った。でも、結局は他人なんだし、今いったような、ぎりぎりの切実さは無いと思ってた。―――不人情じゃない。悪いことでもない。それが、当たり前だと思ってた。人間てそういうもので、そうでなけりゃ、世の中、やっていけないと思ってた。―――でもね、今度の手術の時、色々、世話してくれた牧子が、病室から帰りがけに、ちらりと振り返った。その目に、<生きていて>っていう願いがあったんだ。例えば<自分の腕一本とでも引き換えにして、わたしに生きていてもらいたい>って感じ。―――びっくりした。後から来てくれた美々ちゃんにも、そんな感じがあった。意外だったなあ。」

 素晴らしいなあ3人の女性たちの友情。それが、最後のクライマックスにつながる。

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| 古本読書日記 | 05:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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