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岸本葉子   「和の旅、ひとり旅」(小学館文庫)

地下鉄や電車は、どちらかというと会社員を中心に男性の乗り物だ。それに対しバスは女性、特におばさん、お婆さんのための乗り物だ。

 お婆さんは、いつも時刻よりかなり早めに停留所にやってくる。そして備えられているベンチに座りながらバスを待つ。そんな時、岸本さんが停留所にゆく。お婆さんが居ることに気付くが、ベンチに並んで座れないので、バス停の脇にたってバスを待つ。バスが来たらお婆さんに順番を譲ればいいと思って。ところが、時間が近付くにしたがって、後ろに並ぶ人の列ができてくる。これは困ったことになったなと思っているとき、バスがやってくる。

 どうしようかと悩む。その時バスを待っていたあるおばさんが大きな声で言う。
「おばあちゃん、バスが来ましたよ。」
この声のおかげで、岸本さんはお婆さんにバスの順番を譲ることができた。

 混みあっているバス。あるバス停に近付くと、「降ります」と言う声がかかり、人の中を縫って降りてゆく。一人目、二人目、三人目の50歳くらいのおばさん、気が弱いのか「降ります」の声が小さくて運転手のところまで届かない。運転手がバスを発進。おばさんも降車をあきらめる。

 そのとき大きな声があがる。
「降りますって」するとその前の人が
「降ります」その前の人が
「降りる人がいます」そして運転手の後ろに立っている人が
「運転手さん、降りるんですって」

この時の様子を描いた岸本さんの表現が本当に素晴らしい。
次々とわきあがる声が、しなやかな無数の腕となり、ひとりの人を守りながら、ステップの方へと、やさしく手送りしていくように思われた。

 そして、こんなことができたのはすべて女性によってだった。

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| 古本読書日記 | 05:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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