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三羽省吾    「路地裏ビルヂング」(文春文庫)

雑居ビルには、世の中の吹き溜まりのような会社や事務所が集まっている。この作品は雑居ビルのそれぞれの階で働く人の姿を連作にした作品である。

 一作目の加藤は、元フリーター。失業保険受給とフリーターを繰り返していたが、このビルに健康器具、健康食品を販売する会社に正社員として採用される。だいたいは親族や知り合いに販売が終わると販売が落ち、それで会社を辞める人ばかり。それで、会社も顧客情報は手にはいるし、給料も安いまま辞めてもらえるし、ありがたいことだと考えている会社。

 二作目は無認可保育園に勤める50代の保育士免許のないおばさんの話。

 三作目は成績もよく大学まででたが、司法書士になりたくてずっと試験を受けているが失敗ばかり。それで、仕方なく塾の講師をしている先生の話。

 四作目は不動産会社の小さな分室での話

 五作目は、デザイン事務所と言っても、新聞の折り込みをデザインしている場末のデザイン会社の話。

 どれも落ちこぼれた人々の話なのだが、どの作品の主人公も、時には不遇に嘆くこともあるが、結構いじけず、強く頑張りぬいている。

 二作目の「空回り」で作者三羽は今の人たちの実情と思いを綴っている

「夢や希望を持つことは素晴らしいことだが、職業をニコイチのように言われ過ぎている。ゴミの収集車に乗っている人が、職業上の夢を叶えているか。たぶん叶えていない。しかし、社会にとっては金メダリストより必要とされる存在だし、私生活ではいくつもの夢を叶えているかもしれない。何で飯を食うかということについて夢や希望を持つことも大切だが、大半のものは叶えられないという現実の方を教えられていない。だから、叶えられない人生なんてつまらない、と短絡的になる。つまり、甘いものばかり与えられて育っているのだ。その反動で、大抵の子はやりたいことではなくできそうなことを選ぶ。選んでいるようで、本当は面倒な努力や人付き合いを避けているだけだ。」

 本当に三羽の言う通りだと思う。

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| 古本読書日記 | 05:46 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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