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小泉武夫   「うわばみの記」(集英社文庫)

酒というのは、飲んで酔って、ストレスを発散したり、愚痴を言ったりして、最後は酔いつぶれるまで飲むことにその楽しさがあるものだと思う。

 この作品集には、希代の大酒飲み、いわゆるうわばみが登場する。しかし、どのうわばみもどれだけ飲んでも酔いつぶれるということは無い。酒で身を滅ぼすなどというのは、最も卑しい酒の飲み方。酒は飲んでもいいが、絶対酒に飲まれてはいけない。それは、酒を愚弄するもの。酒に対し真正面から誠実に対応して、懸命に飲まねばならない。この短編集ではうわばみであっても、酒飲みの王道をゆく人間が描かれる。

 武士も飲み屋のような気楽の酒場での酒飲みでは気を緩くして飲んでも構わないが、自分の主人が主催する酒宴では気楽な飲み方はできない。

 そんな酒席は「饗設(あるじあらため)」と言う。

この宴は、酒を飲んで酔いを楽しむことが趣意ではなく、酒を介して精神を修養して、併せて、一同に会した者達がその酒を通じて礼儀、信義、忠誠、団結、尚武心などの鍛錬をはかる場である。つまり、武士道の作法を身に着ける場なのである。いやはや、武士の酒は大変なものである。

 この酒宴でもっとも大切な役を演じるのが「おあえ」。おあえは主人に成り代わり、参加者一人一人に対し、口上を述べながら、献杯、返杯を行うのである。こういった酒宴には100人ほどの参加者があるのが普通。それでおあえは献杯、返杯を繰り返し、だいたい一人で6升から7升の酒を飲む。

 それでもきりりとして酔うことなく儀式を勤め上げねばならない。
主人は自分の配下におあえ役を務めることができる者を探さねばならない。全く武士階級とは大変である。

 酒道を極めるといって、こんな宴会に出席するのはご免こうむりたいものである。

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| 古本読書日記 | 06:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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