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川上未映子   「きみは赤ちゃん」(文春文庫)

川上未映子35歳での妊娠、出産から1歳までの育児経験を書いた作品。

産後クライシスの場面が強く印象に残った。

子供が誕生する。私は、その子供の育児に、母親の体も多少合わせるように変化するのではと思っていた。

 しかし、体内時計を含め、完成した生活スタイルに全く変化はない。赤ちゃんを育てるためには、赤ちゃんの生活スタイルに母親は合わせねばならない。赤ちゃんがかわいいとかかわいくないとかいう次元ではない別次元で「眠れない」ということが襲ってくる。「眠れない」ということは心底、精神と肉体を蝕む。

 赤ちゃんはほぼ2時間おきに、母乳を要求する。全く眠ることができないまま、赤ちゃんのリズムにあわせて母乳をあげなければならない。

 終わりのある仕事で、徹夜して、4日後に睡眠をとる。これも大変だが、終わりがあるということが最初からわかっていると人間は耐えることができる。
 しかし、赤ちゃんへの授乳は、いつ終わりがくるかわからない。そんな中で、殆ど睡眠がとれない日が続く。これは、現実拷問である。

 「いまがいつ何時なのか、記録もつけているし時計もみているから文字や数字としてはわかってはいるんだけれど、でも、体にその感覚がまったくないんだよね。眠らないし、回復がないから、一日に終わりというものがないのだ。ただ、おなじことがえんえんとくりかえされ切れ目のない世界。まるで長い一日の最初にいつもいるようなそんな感覚。」

 恐ろしい産後クライシス寸前。それでも自分の子をじっと見る。そして頑張ろうと思いなおす。

 「目の前の、まだ記憶も言葉ももたない、目さえ見えない生まれたばかりの息子。誰がしんどいって、この子がいちばんしんどいのだ。お腹のなかから全く違う環境に連れてこられて、頼るもの、欲しいものは、わたしのおっぱいしかないのだ。」
 今のかけがえのなさを、川上さんはそのときひしひしと子供を抱きながら感じていた。

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| 古本読書日記 | 06:05 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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