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佐野洋子   「右の心臓」(小学館文庫)

佐野さんは、本当にすごい。子供時代のことを実によく覚えていて、しかも、そのころの子供になり切って小説を書いている。なり切った気持ちになって書かれている小説はたくさんあるが、どうしても、作家の今の環境や、登場人物への想いがはいりこんでしまって、嘘っぽいところがでてしまう。佐野さんのこの小説は全くそれが無い。

 お兄さんのヒサシが心臓が弱く死んでしまう。そのとき、夜中、街の医者を主人公の洋子が医者の手を握って、道なき道を近道と言って、崖をおりたり、あぜ道を走ってゆく姿に強烈な必死さを感じる。

 それでもヒサシは死んでしまう。まだ戦争直後、火葬場が無い。雨の中、河原に遺体を運びそこで遺体を村人が焼く。しかし、物資不足で十分な石油が無い。雨も降るからなかなか焼けない。

 村人が言う。「どうせ、わからないから、焼けたところの骨だけ運んで、後は川に放り投げよう。」と。そして、それを実行する。たまたまそれをヨウコが見ている。

 そのことに気付いた村人がヨウコに言う。
「絶対に今のことしゃべっちゃいけないよ。」ヨウコはうんと頷く。そこがとても悲しい。


 僕らの小さいころは、アタマシラミがたくさんいて、みんなの頭や身体を蝕んでいた。お風呂がある家が殆ど無くて、風呂のある家にお風呂をもらいにゆくが、気おくれがあり週一回、二回が精いっぱい。だから、たくさんの子供たちが不潔だったのだ。

 先生が、シラミを髪の間からみつけ取ってくれた。ほかの生徒がバケツに水を汲んできて、先生が頭を洗ってくれた。そして、アメリカが持ち込んできたシラミ防除剤であるDDTを下着の間に降りまいてくれた。

 それでも、次の日には、やっぱりたくさんのシラミが頭を始め、体にいっぱいくっついていた。

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| 古本読書日記 | 06:43 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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