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吉田健一    「酒談義」(中公文庫)

吉田のエッセイのうち酒に関わるものを集めて収録されている。半分以上は既読。80年代に発表した作品も多く載っているが、多くは1950年代後半から60年代前半の作品が多い。

 50年代から60年代にかけての7酒事情は現在と比べ雲泥の差がある。我が家でも父親が毎晩晩酌していたが、日本酒は今では無くなったが最低品質の二級酒。それをもったいないようにしてチビリチビリとやっていた。

 50年代にはカストリという名のメチルアルコールが主成分の酒があった。

ワインなど殆どみることはなかった。関税が異様に高かったから。現在1000円しないようなワインでも5000円以上はしたと思う。薬品である「養命酒」や「赤玉ポートワイン」がワイン代わりだった。

 そんな時に吉田は日本酒について言う。
銘酒というのは酔わせない酒だという。灘、広島、或いは秋田あたりの高級日本酒は、飲むと酔い心地がしてくるが、ある程度までいくと、それからいくら飲んでもあるところでいつまでも止まっている。一旦、酒をやめると、酔いはさめるが、そこから飲みなおしていくらのでも、酔いがあるところで止まり、それ以上には絶対酔いがまわらない。ずっと気分がよいまま飲み続けることができる。

 こんな酒は、当時一般人は絶対飲むことはできない。

 今は、価格がいくらするか知らないが、吉田が普通に飲んでいたブルゴーニュの赤ワインシャトーヌフ・デユ・パープという赤ワインがある。このワインを吉田は絶賛する。

 吉田茂が総理をやっていたころの話だから、昭和20年代の戦争のつめ跡があちこちに残る時のことである。

 吉田健一が銀座のフランスレストラン「小川軒」に頼んで作ってもらって家で宴会をする。
そのときフォアグラがだされる。このフォアグラ、この宴会のために、飛行機でパリから空輸してくる。

 今は、総グルメ時代で、当たり前のように誰でも、大吟醸酒やフォアグラを嗜む。
昭和20年代、30年代。食うことがやっとの時代、俗世間から離れて、お金に不自由することなく、酒にワインに高級料理を楽しむ人々がいた。

 あまり素直に、素晴らしいエッセイだと思うことのできない自分がいる。

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| 古本読書日記 | 05:43 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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