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佐野洋子    「あれも嫌いこれも好き」(朝日文庫)

青春とは何であったか。ただ時間をもてあまして、ウロウロキョロキョロすることであった。落ち込んだり向こう気強く生意気になったり、何も知りもしないのに、断定的にこの世を切り下ろしたりわかりもしないのに偉そうに小難しい本を読みふけって暗い顔をして深刻ぶったりすることであり、その深刻さも、はしがころがっただけでたちまち軽薄なキャーキャー声にひっくり返ったりするだけであった。その上、不安であった。

 佐野洋子の青春への想いである。

今の若者が、スマホやSNSやLINEやゲームに熱狂するように、当時は映画か本しかなかったので、青春は本を読むことが流行だった。その意味では、中味は今の若者とそんなに変わらない。

 そして延々と議論をした。「チボー家のジャック」のジャックについて、「アンナカレーニナ」のウロンスキーについて。

 ところが、その頃、誰もが熱狂して、熱心に読んでいるのに、議論するどころか、皆に明かさない作家がいた。それが太宰治だった。

 太宰が何回も心中を試みて、その度に相手だけが亡くなる。そして、最後は太宰も玉川上水で心中して果てる。太宰に読者は熱狂するのだが、自分も最後は太宰と同じ道を選ぶのではという恐怖が奥底にある。たぶん、何人かは太宰の影響を受けて自殺したひともいただろう。

 そんな太宰大流行の時代、下宿や寮のおばさんがよく言っていた。
「本は読んでも読まれちゃいけないよ。」
「小説は読んでも、小説の毒には気を付けるのよ。」

本が青春とともに存在し輝いていた時代の話である。

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| 古本読書日記 | 05:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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