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青山七恵     「快楽」(講談社文庫)

 今までの青山のイメージでは考えられない官能小説。官能場面を、これでもかとあらゆる言葉を駆使して描きつくす。それは挑戦としては評価するが、青山の他作品からかけ離れすぎて、少し引き気味になる。

 最初の導入部分が、引っかかる。社会的地位も金銭的成功も収めている慎司。美貌と上品さを備えているが常に心が揺れている妻の燿子。この夫婦が、喫茶店をしている、美男子の徳史とその妻で可愛く、無邪気な笑裕子をヴェニスで会いましょうと誘う。

 慎司、耀子夫婦がヴェニスを旅行するのはわかるが、喫茶店オーナーのあまり海外体験のない夫婦を誘い、その夫婦がヴェニスまで行くという設定が浮世離れしすぎていて、話に無理がある。

 クライマックスは、耀子がかっての恋人だった徳史とヴェニスで、愛を交歓するところ。

 そこを最大盛り上げるために、耀子と徳史の、初めての愛の交歓場面の描写が、青山のイメージをくつがえす。

 「彼は彼女の首をつかんで、無理やり自分のほうにむかせ、その冷たい唇で彼女の歯や舌を貪った。耀子は自分が彼に食べられているのを感じた。そして同時に、彼を食べていた。・・・
口付けは長く続いた。彼女は初めて、自分の舌の分厚さや滑らかさ、そしてその驚くほどの獰猛さを知った。口蓋で激しくぶつかりあう二人の歯は、自分のものかも相手のものかもわからない肉を触れるそばから引っ掻き回して血まみれにした。彼女は血の苦さを味わった。
下半身の痛みはまったくと言っていいほど感じなかった。耀子は右足のスニーカーを脱いで、足に引っかかっていたジーンズとショーツを振り落とした。それから、彼らは、もっと奥まで密着することができた。彼は彼女の首を解放し、血の味の残る歯をくいしばってちかづいてくる瞬間に向かって集中した。やがて二人はほぼ同時に叫び声をあげた。」

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| 古本読書日記 | 06:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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