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宮下奈都    「よろこびの歌」(実業之日本社文庫)

 都会ではないが、地方では公立高校に行くことが普通の姿になっている。ところが、公立高校受験に失敗すると、私立高校に行くことになる。これが結構挫折感を引き起こし高校生活を暗いものにする。もちろん、最初から私立高校を目指して入学した子も多いだろうが、概して受験に失敗して入学してきた子が多い。

 こうした生徒たちでは、受験のことを喋ることはタブーである。また、世を拗ねて、こんな子たちと交わりたくないと孤高とした生活を送る子や、もう自分の人生は終わり、余生を送っているなどと考え行動する子がでる。

 この作品の主人公の御木元玲は、有名なヴァイオリニストを母にもち、自らも音楽の世界で活躍することを目指し音大付属高校を受験するが失敗。新設の私立高校に入学することになる。挫折感から他の生徒たちとの交流を拒み、孤高とした高校生活をおくる。

 その高校の定例行事で合唱コンクールが開かれる。主人公の玲は、指揮者に選出される。しかし、練習にはほんの数人しか現れず、玲の要望でコンクールで歌った「麗しのマドンナ」は最悪の出来となる。

 この後のマラソン大会。運動音痴の玲は最下位で、学校の運動場に戻ってくる。そこで級友たちが玲への激励であの「麗しのマドンナ」を合唱する。

 ここが玲の分岐点になる。うれしい、涙もでる。そして、この歌をみんなでもう一度歌いたいと強く思うようになる。そして、卒業式で玲の指揮で、この歌を歌う。

 このときの皆に言う玲の言葉が印象に残る。聴衆は卒業生でも他の生徒たちでもない。
「いい?みらいの自分を思い浮かべるの。わたしたちの歌を聴いてくれているのは未来の自分だって。今のわたしたちはこんな『麗しのマドンナ』だよって見てもらおう。」

 本当に素晴らしい言葉だと思う。そして、若いことがどれほど大切なことか、この短い言葉に表現されている。

 ケレン味のないストレートな青春小説。いい小説だと思う。

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| 古本読書日記 | 06:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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