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多島斗志之   「海賊モア船長の憂鬱」(下)(角川文庫)

 18世紀初頭のインドをめぐる、列強イギリス、オランダ、フランスと海賊との闘いを描ける日本人小説家がいることに驚く。活劇、冒険小説。当時の船の構造にも詳しい。だから、戦いの有様も、リアリティがあり、読者は18世紀のインドに連れていかれ、心が躍りながら読書を楽しめる。

 主人公のクレイは、イギリス東インド会社本社よりインド マドラスに派遣される。それは「マドラスの星」と言われる、高級宝石を携えたまま、本社に帰還する途中で消息不明になった上席商務官のニコラス フィリップスの行方を探すため。

 ここに、いかがわしさを漂わせている、東インド会社のマドラス長官であるトマス・ピットが登場する。彼は本社から派遣されていたのではなく、もぐりの闇商人として頭角を表し、東インド会社とは敵対していたのだが、彼の商売の凄腕を無視できなくなった東インド会社が引っ張り込み長官の地位を与えた人物。彼は海賊モアとも通じていると思われている。

 さらに、ここに突然ニコラス フィリップスの妻という女性がイギリスよりやってきて、トマス・ピットに取り入り、クレイに一緒に、フィリップスを探そうと提案してくる。

 こういう出だしで物語は始まる。当然、読者の興味は、色んな人間が絡まりフィリップス探索が行われ、最終的にどうやってフィリップスへたどり着くのかが最大の関心事になる。そのフィリップス探求の過程で、怪しからんピットやフィリップス夫人、そして海賊モアがどんな役割を果たすのかが興味津々となる。

 ところが、驚いたことに、フィリップスの消息は下巻で数行で方付けられる。フィリップスは帰途途中で、フランスへ寝返り、フランス船でフランスにわたり、皇帝に宝石をプレゼント。フランスで優雅な暮らしをしていると書かれる。

 それは無いよと多島にクレームをつけたい。何のための物語の出だしはあったのか。とんでもない肩透かしで、物語の骨格がしっかりと組まれていない。実に奇怪な小説である。

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| 古本読書日記 | 06:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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