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星野博美   「戸越銀座でつかまえて」(朝日文庫)

 40歳を過ぎて、自由気ままに暮らしてきたが、その自由に疲れて、生まれ育った戸越銀座に戻って母との二人暮らしをする。その街と人々の交流を描いたエッセイ。

 ちょうど、五島列島に運転免許をとりにいって、帰ってきたころのことだ。

 星野さんは、本質はおしゃべり好きで、快活な人だ。それが、40過ぎても結婚していず、育った街を離れて母親のもとに帰ってきたことに、世間的に恥ずかしいと気おくれをしていて行動が他人の眼を気にし過ぎている。そんなことを気にする人など殆どいないのに。

 駅に行くにも裏道をわざわざ使ったり、できるだけ人に合わないような道を使って散歩をする。ちょっと星野さんらしくない。

 星野さんの味覚は、子供のころの味覚が変化せず、そのまま今に至っている。だから、子供の頃美味しいと感じたものが今でもそのままおいしく、その他のものはあまり美味しいと感じない。だから、グルメという場所からは遠いところにいる。

 日本中を探してもまったく星野さん以外は存在しないと思うが、星野さんは寿司が嫌いである。寿司が嫌いと公言すると、信じられないとか大馬鹿ではないかと、星野さんを排除にかかる。

 こんな星野さんを可哀想に思ったのか、勤めていた会社の上司がすし屋に連れていってくれた。高級なすし屋だ。その雰囲気に気おくれして、職人にまず「寿司のことは全く知りません。」と予め謝って寿司を食す。トロがでてくる。食べ方がわからないので、ネタと握り飯を分離して、わさび醤油をたっぷりつけて食べる。職人が怒る。「そんな食べ方をしてはいけない。ネタのおいしさが消えるから醤油をたっぷりつけてはいけない。」と叱られる。

 だから最初に断ったじゃないか。寿司の知識は外国人レベルだって。そんなに怒らなくても。

 「カリフォルニア巻作ってください。」「そんな寿司とは違うものを作れるか。」にらみつけられる。カッパ巻だけ作ってもらって、後は焼き魚を食べる。

 これで完全に星野さんは寿司嫌いになった。

 星野さんの祖父は漁師だった。そして、生魚はどんな菌がはいっているかわからないと言って、煮魚、焼き魚しか食べなかった。星野さんの寿司嫌いは祖父の血を継いで筋金いりだ。

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| 古本読書日記 | 06:06 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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