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伊集院静   「旅だから出逢えた言葉」(小学館文庫)

 伊集院が世界のあちこちを旅して、そこで遭遇した出来事に触発されて、彼の人生を励まし支えた言葉を思い出したり、実際にその旅の場面で出会って支えられた言葉を紹介して、旅のすばらしさを描くエッセイ。殆どが絵画に纏わる旅。あまり絵画に造詣が深くない私には少し距離があった。

 確か遠藤周作の小説「留学生」にでてきたと思う。

 遠藤周作は、1950年、戦後はじめての留学生としてフランスに渡っている。そして、大学が始まるまでの2か月間をルーアンという小さな町で過ごしている。そのルーアンを伊集院も訪れている。

 遠藤はこの小さな町のロビンソン一家にホームステイをして過ごす。ロビンソン一家は遠い国よりやってきた日本人の遠藤を家族のように扱う。当時、フランスは日本を敵として戦った国であり、しかも下等人種と思っている黄色人。差別、嫌悪が最も大きかった時代。

 2か月が過ぎて、ルーアンを去る日、ロビンソン夫人が遠藤に一枚の紙きれを渡す。
これから、遠藤には、心無いフランス人から、侮蔑、差別の言葉が浴びせられるかもしれない。そんなときは、この紙切れに書いてある言葉を叫べと。
 「ケル・ペ・ランス・チェ」と。この意味「くだらぬ屁をこくな」という意味。

 伊集院はいつも一人で旅をする。そして、特に若い男には一人旅を勧める。旅は、普段のしがらみや人間関係から完全に解放される。それは、孤独ということである。孤独は、自分の人生や悩みを見つめなおし、深く考える機会だ。遠藤の時代とは比べものにはとてもならないが、伊集院の孤独の旅は、遠藤の凍てるような孤独の留学に確かにつながっている。

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| 古本読書日記 | 06:09 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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