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津村記久子    「カソウスキの行方」(講談社文庫)

 妥協とか折り合い、それができるかは我慢強さなのだと、この短編集を読んで思う。

 課長のセクハラに弱っていると訴えてきた後輩の悩みに義憤を感じた主人公イリエは、そのことを部長に訴える。当然、後輩も加勢してくれると思ったら完全にハシゴを外される。どうも、後輩は課長と不倫関係にあったらしい。イリエは先輩から、後輩は不倫していることを誰かに言いたかっただけなのにバカなことをあんたはしたんだよと言われる。

 そして、イリエは郊外の倉庫に異動させられる。倉庫は、パートのおばちゃんと、2歳年下の上司藤川と大柄だが、いかにも動きが緩慢でさえない同い年の森川がいた。藤川はみためはそこそこだが、既婚者。冴えない森川は独身。

 しかし、週末は、冷たい風がふきぬけるようなアパートで一人過ごす。クリスマスイブに一人で過ごすなんて耐えきれない。それで老け顔の冴えない森川でも我慢して恋人のようにふるまうのだと決意する。

 しかたなく恋をしようとする。普通だったら絶対つきあわない相手なのだけれど。こういう恋は、盛り上がっている恋とおなじように、常に相手のことを考えている状態になる。それも殆ど自問自答だ。彼のどこがいいのか。私とはたして合うのか。彼は私をどう思っているのか。理屈を考え分析ばかりしている。分析表まで作るようになる。

 まあつきあってみれば、森川の人柄は悪くないことがわかってくる。同じアパートに住んでいて、酢が切れているとたっぷりわけてくれる。ハンドクリームがなくてこまっていると、園芸用だけど尿素を提供してくれる。じゃがいもも小松菜もくれる。

 盛り上がりもないし、愛する、恋するなんて言いあったりする場面もない。

 それでも、互いに我慢し、人間性にふれ、こんなカップルは盛り上がることなく結婚し、じわじわと生活をくりかえし、家族生活を完遂するのだろうなと思う。

 3作目の「花嫁のハムラビ法典」も我慢カップルの話。
結構世の中こんなカップル、家族であふれかえっているのではと思わせる短編集だった。

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| 古本読書日記 | 06:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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