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皆川博子      「花闇」(河出文庫)

 江戸末期から明治にかけて、大人気を博した歌舞伎役者女形の澤村田之助の生涯を描く。

 この作品を、皆川さんは歌舞伎の名題下の役者、市川三すじの視点で創り上げる。名題下というのは、名前が書かれない役者ということで、大部屋役者を指す。何故か、大部屋役者が雲上人でもある大役者の世話をしていて、影のように田之助に付き従う。

 江戸時代では、歌舞伎は大衆娯楽のなかで、最高の位置をしめていた。常に芝居小屋は大入り満員で、楽屋の入り口は役者を待つファンであふれかえっていた。幕末は世情を反映して、退廃的な内容や、人々を驚かすスプラッターのような演目がもてはやされた。

 ところが明治になり、政府は何もかも西洋から取り入れるということに急変し、西洋のような格調高く、清廉な演目を舞台にかけるよう強制した。大衆の気持ちを代弁するような劇は、取締が行われたり、劇場の新設も政府の意向に即したものを行うことが条件になった。

 こういう激変が底流にあり、政府の意向に沿う市川團十郎と大衆の喝采にこたえようとしていた女形田之助の対立。時代の激変に翻弄され、頂点から一気に落ちてしまう田之助が印象深く描かれている。

  脱疽により、最初片足を切り落とし、それからもう一つの足、最後は両手も切り落とし、それでも舞台にあがる田之助の異様な執着が強烈。その執念に大衆は集まるが、最初は奇抜で面白いが、舞台としてみると、動きがぎこちなくなることは否めず、飽きられるのも早い。

 そんな体だから、どうしても見世物のような芝居になり、どうあっても田之助はおちぶれてゆくだろうと思わせるのが、徳川時代の武士がおちぶれてゆ姿とかぶさり印象的だった。

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| 古本読書日記 | 10:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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