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勝見洋一    「中国料理の迷宮」(朝日文庫)

 この本のタイトルが異様である。中華料理でなく中国料理と書かれている。あまり中国料理という言葉は聞かない。つまり、政治や権力闘争、歴史に翻弄されてきた中国の料理の変遷を扱っているのである。

 今まで私は中国はもちろん、香港、台湾を始め世界各国で中華料理を味わってきた。で、一番おいしいと思った中華料理は雪の中バンクーバーで日本料理を食べようとして行った店が休みで、寒いからと向かいの中華レストランで食べた中華料理だった。

 香港が中国に返還された前後に、こぞって一流料理人が海外に渡った。その渡った先で一番多かったのがバンクーバーだった。

 この作品、こんなエピソードもたくさん披露されているが、圧巻なのは毛沢東の文革時代の中国の食事について扱ったところ。

 文化大革命というのは、真に正しい人民は農民であり、すべての人民は農民から学べということで、都市生活者のレベルを農民レベルに落とそうという革命運動であった。それは時代を逆回転させようということである。

 都市生活者は農民と同じものを食べるということで「労農兵メニュー」というものが現れる。作者はどうして行けたのかわからないが、胡同といわれる路地奥にある町内会組織である「居民委員会」が運営している居民食堂を取材している。町内会員は、役員が監視している中、入り口に掲げられている毛沢東の肖像写真に敬礼して、今日の革命的行動は何をしたかを報告し、食事にありつける。メニューは暖かい料理とスープに饅頭一個だけ。そしてこれがこれ以上ないというほど不味いのである。これは耐えられないと家にでも帰って、おいしいものを食べるところを見つかり役員に報告されると反革命分子となり、命さえ失うこともある。

 ところG、高級官僚や外国賓客をもてなす宴となると、考えられないほどの高級料理や高級酒が特別な招待所でふるまわれるのである。作者も多く経験しているようだ。

 この宴が大変で、赤じゅうたんが敷かれた廊下を、招待所の料理人たちの拍手のなかを自らも拍手をしながら宴会場まで行かねばならない。料理長が宴会場で待っていて、お互いに握手して、挨拶をかわす。そして、料理がでてくるたびに、起立して拍手をせねばならない。

 冬瓜のスープに入っている銀杏をみんな食べずに大事に紙袋に入れている。どうしてと聞くと、銀杏に毛沢東語録が彫ってある。家に持ち帰り宝物とするそうだ。

 文革は1000万人の犠牲者をだしたと言われている。当時を覚えているが、朝日新聞をはじめ文革礼賛のマスコミ各社が流した。新聞はこのときから信じてはいけないかもしれないという疑念を持った。

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| 古本読書日記 | 09:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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