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宮木あや子    「白蝶花」(新潮文庫)

 昭和19年、山形県の酒田から、福岡県知事の屋敷に奉公にやってきた主人公の千恵子。

 その屋敷の令嬢和江は、千恵子にしか心を許さない。すこしわがまま。和江は実は、書生の喜三郎に恋心を抱いていた。しかし喜三郎は同じ奉公人の伸子と愛し合っていた。このことが余計に和江を頑なにしていた。

 喜三郎が出征することになり、交代で政吉が書生にやってきた。喜三郎が出征してすぐ、伸子の妊娠が明らかになる。しかし、伸子は妊娠中毒に陥り、子供は流産する。

 一方千恵子は政吉と結ばれる。そして、政吉も出征。これで和江は怒り心頭となり、千恵子は故郷酒田に帰る。
 酒田の実家で両親は千恵子の妊娠を知り、世間体が悪いから子供を下ろすように指示する。これに千恵子は反発して家をでる。

 そこから、酒田の飲み屋に匿われ、その飲み屋の女将の妹を頼って東京にでてくる。その東京で福岡県知事をやめて東京に戻っていた元主人宅を訪ねる。懐かしい和江に謝ろうとして千恵子は和江にコンタクトを試みるが和江は自室にこもって扉を開けてくれない。

 そうしているうちに東京が空襲をうける。このまま屋敷に留まっていると、和江は死んでしまう。必死に千恵子は扉をこじあけ和江を連れ出す。空襲途中、和江が足をけがして歩けなくなる。血縁でもない和江を放り出そうかとも思ったが、和江を身重でありながらおんぶして、青山墓地まで連れてくる。そのとき屋敷は完全に焼け落ちていた。千恵子の救助がなければ和江は完全に死んでいた。しかし、和江はお礼の一言もなく青山墓地を去る。

 戦争が終わって、千恵子は政吉の両親に引き取られ、男の子を生み育てる。和江は東大生と結婚をし、幸せな家庭生活を送る。

 空襲から50年たって、和江は認知症となり、病床にある。死の間際になって、屋敷でともに暮らしていた人たちが和江の心に浮かぶ。色んな人たちが浮かんで、最後に「千恵子は無事だろうか。」とつぶやく。

 そして、千恵子の「お嬢様」「お嬢様」の呼びかけの中で息を静かに引き取ってゆく。

 あの青山墓地で懸命に自分を救ってくれたのに、お礼さえ言わなかった。悔恨というのはずっと残り、いつも心の底で疼き、人々を折に触れ突き動かすのだ。

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| 古本読書日記 | 08:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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