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江國香織    「つめたいよるに」(新潮文庫)

 江國さん初期の掌編21篇を集めた作品集。

 どの作品も見事だと思ったが、やっぱし第一作目の「デューク」が群を抜いて鮮やか。

 主人公が溺愛していた愛犬デュークが死んだ。老衰だった。アルバイトから帰ってきたときは、まだあたたかかった。しかし、膝の上で抱いて撫でている間に、いつのまにか冷たくなって固くなってしまった。

 卵料理と梨と落語が大好きで何よりもキスが上手だった。ときおり拗ねた横顔はジェームスディーンにそっくりだった。

 ワーワー泣きながら外へ飛び出した。涙がとまらないまま電車に乗った。見かねた少年がどうぞと言って席をゆずってくれた。その少年は、乗り換えた駅も下りた駅も同じだった。

 「コーヒーでも」と少年を誘った。
そこで少年は朝ごはんがまだだと言ってオムレツを食べた。それから、少年に誘われプールに行く。少年が手を添え泳ぎを助けてくれた。次は美術館。インドの古代美術に少年は目を奪われる。そして、映画館へ。最後は落語を見に行く。

 そして街にクリスマスソングが流れている中、別れのときがくる。

 少年が言う。
 「今までずっと楽しかったよ。」
 「そう私もよ。」と主人公は答える。
 少年は更に語気強く。
 「今までずっと、だよ」と言い主人公を引き寄せキスをする。
 主人公は驚く。そのキスはデュークのキスそっくりだった。
 「僕もとても愛していたよ。それだけを言いたかったんだ。」
 と言いながら主人公の元を去ってゆく。その横顔がジェームス ディーンにそっくりだった。止まっていた涙が主人公から溢れだした。

 鮮やかな余韻を残す物語である。

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| 古本読書日記 | 09:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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