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江國香織     「都の子」(集英社文庫)

 江國さん30歳になったことを記念して出版したエッセイ集。

 あとがきで江國さんが語る。
 「書く」というよりも、例えば「少しずつ冷凍する」という方がしっくりする作業でした。お料理をたくさんつくって小分けにし、一つずつパッキングして保存する、あれです。四百詰原稿用紙に四枚という枚数は、その作業にちょうど具合のいいものでした。

 私たち読者は、その詰められた江國さんの記憶の物語を、冷凍パックから解凍するような気持ちになって読み進む。それは、江國さんの冷凍パックに動かされながら、私たち自身の忘れてしまった記憶の冷凍パックを同時に解凍する作業をしていたのだ。

 江國さんは、真夜中に起きて仕事をする。しかし、いつもいつも仕事をするわけでもない。

 少し疲れていて、熱いお茶とお風呂だけが友達だと感じるときがある。その他には、何もいらないし、誰もいて欲しくない。そんな時に必要なものは本ではなく音楽。こんなときの音楽は耳だけでなく全身に降りかかってくる。皮膚も、髪の毛の一本一本も、どんどん音を吸収してしまう。だから、心や脳裏だけじゃなく、肝臓も腎臓も音楽を聴く。

 音楽の浸透力の強さ、音楽の本質を見事に言葉で表現している。ここまでの感受性が無いと、深い感動を与える物語は創造できない。

 そして、音楽が終わり、未明の街に散歩にでる。

 足を交互にだしている、ということや、両手を振っているということ、その指先までちゃんと神経がかよっていて、手を振ると指のまわりまで空気が流れること、そうやって自分が街の空気を振り回しているのだということ、なんかよくわかるのだ。頭で理解すのではなく、体が直接理解する。

 受け身の音楽から、きりっと切り替えた早朝の散歩。そこから物語が聞こえてくる。

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| 古本読書日記 | 09:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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