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原田マハ     「太陽の棘」(文春文庫)

 実話に基づいているから、原田さんが意図したのではないかもしれないが、沖縄の置かれている本質をものの見事に表している素晴らしい小説である。

 舞台は1948年、世界大戦が終わって3年後の沖縄である。主人公のエドは、戦争中は大学生で徴兵されず、戦争は知らずない。大学を終えて軍医として京都経由で沖縄米軍に赴任する。エドは父が、医者だったので、家業の医者を継ぐことを義務付けられていたが、本当は絵を描くのが大好きで、できれば絵描きになりたかった。しかし、能力を見極めて、絵描きを断念して精神科医となった。

 エドは沖縄へ赴任して、ニシムイという村にニシムイ美術村という画家が集まって絵を描いているところを知る。そして、言葉や文化の違いを越えて、さらにアメリカ占領という支配地位を無視して、彼らとの交流を深める。

 ここにいる画家たちは、戦争当時、従軍画家として軍隊と戦地を回っていて、沖縄の悲劇の戦線は経験していない。

 1948年は、朝鮮戦争が始まる直前で、朝鮮戦争が始まると、沖縄からは大量の米国人が朝鮮に出兵し激しい戦争で多くの米個人が戦死した。

 エドもニシムイの画家たちも、戦争の現場を体験していない。それだからこそ、沖縄の人たちとアメリカの普通の人々がその心の底では、何を思っていて、その思いが綿々と現在まで繋がっていることをこの作品は鮮やかに描きだしている。

 普通の人々は、アメリカであれ日本であれ、戦争はいけないという気持ちでつながっている。戦争は、権力者、政治家が起こし、何の責任もとらず、庶民を振り回し、犠牲にする。

 一般の人たちが繋がることの重要性がひしひし伝わってくる小説だった。

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| 古本読書日記 | 16:26 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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