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津原奏水     「たまさか人形堂物語」(文春文庫)

 広告代理店をリストラされた主人公の澪、思いもかけず祖父がやっていた人形店を引き継ぐことになる。そこに、人形マニアの若い富永君がアルバイトで、経歴素性は定かではないがとんでもない技術を持っている師村という職人を加えて人形店をしてゆく。今は人形作りや小売りも殆どせず、専ら、人形の修繕で店を成り立たせている。店の謳い文句はどんな人形でも修理しますである。

 女子高生たちが、ユーフォーキャッチャーで獲ったぬいぐるみまで持ち込まれる。これをきちんと元通りにしてあげると、女子高生の間でネットで評判が流され、次々ぬいぐるみが持ち込まれる。

 人形を勝手に高い安いで区別してはいけない。たとえ100円で得たぬいぐるみでも、女の子にとっては大切な宝物。獲った値段の10倍、20倍の修理代を払っても、愛着ある人形はいつまでも大切にしたい。

 そうなんだよねと感心して読み進むと、ある日外から澪が帰ってくると、富永が可愛い女の子と一緒にいる。富永もやるねと思ってかわいい子をよく見ると、これが女の子でなんと全裸。男が慰みものに使うダッチワイフである。友達が、母親がアパートに実家からくるので、その間だけ預かってほしいと言われて預かったものだ。

 ダッチワイフといえども、大切な人形である。澪のダッチワイフを見ての感想。

 「ここにあるのは、あくまで人形としての端整さであり精緻さであり、むしろ人形師の作り込みが細かいほどに、人形は静寂に包まれる。・・・あらためて観察すれば、麗美(ダッチワイフの名前)、と富永君が呼ぶこの人形は、必ずしもリアルではない。脚の脇には、表皮を成型したときのバリの痕跡だろう。ストッキングのシームに似た線が見える・・・・
 それでいて、どうしてだろう。この人形の時間は、私の眼に、止まっている風には映らない。いたいけなと感じるのは、いつの日か彼女に成熟がおとずれるような予感があるからだ。」

 このダッチワイフ、女性らしさをだすために大変な技術を必要とする。特注で70万円もした。大量のシリコンを使うため重量が30kgもある。

 富永が女体人形としてはまだ欠陥がたくさんある。それを修理してほしいとメーカーに依頼すると、最初は嫌がっていたが職人がやってきて説明する。

 その説明には、色気とか性の欲望などはひとかけらもない。

 シリコン人形は日本ではまだ誕生したばかり。骨組み、軽量化の技術は未完成で日々手探りで取り組む。さらにシリコンは一旦埋めると形状の変化ができない。魅力ある女体を完成するための造形を獲得するために数年はかかると、開発の苦心ばかり。ダッチワイフなどと馬鹿にしてはいけない。

 日々たゆまざる努力と技術革新への挑戦が続いているのである。

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| 古本読書日記 | 15:28 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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