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津原泰水      「赤い竪琴」(創元推理文庫)

 グラフィックデザイナーでとして壁に突き当たっていた入栄暁子は、祖母の遺品からでてきた夭折の詩人の日記を、詩人の孫である古楽器の製造、修理職人である寒川耿介に返しにゆく。

 耿介は最初は引き取りを拒否していたのだが、最後には自分の創った赤い竪琴を暁子にあげることで日記を引き取る。

 痛い恋も経験し、もう恋に憧れる時代を過ぎ、恋などしないはずだったのに、暁子はすっぽり耿介の穴にはまる。

 前の恋人と別れてから元恋人のストーカーのような行動から逃れるために、耿介の楽器工房まで逃げて、そこで一週間すごす。耿介は5階で暁子は2階で過ごし殆ど接点がない。

 暁子が耿介の工房に居座っていたとき、耿介のところに国際電話がある。あのバイオリンの名器をだした、楽器の街イタリア クレモナの楽器工房からの誘いである。耿介はそれに受諾する返事をする。

 そして、クレモナに行く前に、クジラを見たいので小笠原諸島へゆくが、一緒に行かないかと耿介から誘いがある。

 とっつきにくく、ぶっきらぼうで、冷たい耿介には壁がある。しかし、好きだからという気持ちは抑えられないから一緒に行くと同意する。

 小笠原への船のなかでもなかなかしっくり行かない。しかし、そこで、耿介が吐露する。
自分は重い病気にかかっていて余命わずかであり、日本で思い残したことであったクジラを見ることが実現できたから、後は最後の夢、クレモナに行って世界最高の楽器をつくるのだと。

 この告白で2人の壁は取り払われ、帰りの船で、それまでの長い時間を取り返すように、抱き合う。

 そして、船が東京に到着。2人は接吻をする。しかし、今後は逢うことは無い。強い風が吹く中、耿介がタクシーに乗り込む前に暁子に言う。
 「向かい風のときはジグザグに。」
去ってゆくタクシーをみながら暁子が何回もつぶやく。ジグザクにと。

 耿介の祖父と暁子の祖母の叶わなかった恋が重なり合う。
大人の恋は、真っ正直、真っすぐではなくて、向かい風ばかりだからジグザグに行こうよと。

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| 古本読書日記 | 16:03 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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