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森絵都    「屋久島ジュウソウ」(集英社文庫)

 森絵都は、なかなか変わっていて、個性的だ。この旅行記が、どこかの雑誌のために書かれたのか、それとも単行本のために書かれたのかわからないが、かなりユニークな内容になっている。

 出版社の集英社も感動的な屋久島の風景描写を期待してか、4人も同行する力のいれよう。九州一高い宮之浦岳を中心に縦走。その宮之浦岳の頂上に立っての森さんの描写。

 どれだけ景色が素晴らしく感動したのかを出版社は期待するところなのに。

 「正直に言うと、私はこの頂きからの眺めにはさほど感動しなかったのだ。・・・頂上に足をすすめた途端、それまでとは全く違う新しい景色が目にとびこんでくる、というわけではない。・・・こちら側も、あちら側も目に映るものは山、山、山でさしたる違いはない。・・
恐らく頂上のセールスポイントは、360度のパノラマ体験、てところにあるのだろう。東西南北どちらを向いても遮るものがない。たしかにそれは頂上ならではの醍醐味だ。が、しかし人間に四つの眼が無い以上、東を向いたら西が、南を向けば北が死角となり、360度を一時に見渡すことは不可能なわけで、フィギュアスケートのスピンのようによほど勢いをつけてくるくるくるくると回転しない限りパノラマ体験は為しえないのではないか。」

 屋久島と言えばなんて言っても有名なのが樹齢千年以上と言われるご日本最古の縄文杉。

 ここでの描写。

 「日本最古の縄文杉はさすがに大きかった。しかし巨大!と大きく息を吸い込んで見上げるような感じではなく、「はあ、長生きしましたね」「お疲れさまです」「どうか安らかに」と、そっと手をあわせたくなる疲労感が滲んでいた。残念ながらわたしはその樹に生命力を感じなかった。とうに魂が離脱しているという感じ。抜け殻というか。屍というか。」

 集英社の人はがっかりしただろうなあ。

 そして最後に同行した池田さんが、鹿児島空港で購入した「西郷せんべい」はかんがえられないほどの不味さだったそうだ。

 何事も阿ることなく、この毒のある素直さが私には痛快だ。

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