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矢月秀作     「もぐら讐」(中公文庫)

 警察庁のトップである早乙女警察庁長官は、異色の経歴を持つ。キャリアで警察庁に入庁。
 しかし、何があったかは不明なのだが、30歳のとき、警視庁の捜査一課長に異動している。
 警察庁のキャリアが、一所轄である警視庁への異動とは明らかに降格人事である。

 しかし、早乙女は捜査一課長時代の2年間に、迷宮入りのような事件も含め、50件もの事案を解決する。十件も解決すれば、輝かしい実績となるのだが、それに比べれば早乙女課長の実績は異常すぎる。この実績を背景に警察庁に復職し、並み居るライバルを蹴落とし、警察庁トップにすわる。

 50件もの事案解決というのは、無理やり犯人をでっちあげねば実現できない実績である。ということは、多くの冤罪が含まれており、犯人としてでっちあげられた冤罪者たちは、早乙女を憎悪し、この世から早乙女を消し去りたいという人間もでてくる。

 この物語では、ある殺人事件でアリバイの無い人間を状況証拠だけで逮捕し、自白を強要させる。しかし、裁判になって、被告人は無罪を主張。すると、突然、検察から血付きのシャツが証拠品として提出される。作品では、捜査の過程で真犯人がわかる。その際押収した被害者の血のついたシャツを被告人が着用していたシャツとして裁判で提示したのである。

 更に恐ろしいのは、真犯人を事故死にみせかけ、被告人を刑務所で自殺にみせかけ殺す。不正捜査が白日にさらされる危険性を排除するためである。
 権力というのは、そこまででっちあげをやるのである。

 この物語では、不正に加担した人間の弱みに付け込み、冤罪で殺された被告人の子供の兄弟が権力に復讐し、その実現までの過程を物語にしている。

 今まで読んだ矢月の作品の中では、スピード感もあり、殺戮、破壊の背景もしっかりしていて臨場感も十分で、一番よくできた作品だった。

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| 古本読書日記 | 17:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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