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藤沢周平     「静かな木」(新潮文庫)

 短編3編が収録されている。

 藤沢の作品は、藤沢の言いたいこと、クライマックスを印象付けるための仕掛けが実に見事にさしはさまれているところにある。それによって、読者は完全に藤沢ワールドの魅力を読後ずっとひきづる。

 最初の作品「岡安家の犬」。岡安家では一家全員犬が大好きである。今はアカという赤犬を飼っている。みんな犬は大好きには違いないのだが祖父の十左エ門だけは、大好きの質が他の家族とは違っている。十左エ門だけは、とにかく闘犬が大好き。どこかで犬の喧嘩があると常にその場所へ行って喧嘩をはやし立てる。

 岡安家の家主、甚之丞が仲間に誘われ犬肉鍋を食べに行く。その宴の最中誘った金之助が言う。
 「この鍋の犬肉はアカだ。」と。

 それを言われるまでは、おいしい肉だと思っていた甚之丞はその場で肉を吐き出す。そして、その場で金之助に果し合いを申し出る。その場は、仲間に諭され態度を保留するが、金之助には絶縁宣言をする。

 そして、翌日甚之丞は自分の想いを、十左エ門に吐く。すると十左エ門がぼそっと言う。
「アカは年寄だ。年寄は、屋敷で死のうが、野垂れ死にしようが、誰かにつかまって人の口腹を養おうが大した違いがあるわkじゃない。」

 ここで、藤沢は十左エ門とアカとのエピソードを入れる。
ある晩したたかに酒を飲み酔った十左エ門がアカを連れて家に帰るが、酔ってふらつき道がわからなくなりいつまでたっても家にたどり着かない。そして、家並みが切れたところにある小川に落っこちて気を失ってしまう。気が付くと、アカが着物の首元を銜えて、顔が水につからないよう引っ張りあげていた。

 十左エ門は今度は自分がアカを助けてあげようと思い抱っこをするが5.6歩あるくと足が前に進まなくなる。それで、アカをおんぶして家路につく。

 そんなエピソードをさしはさんだ直後に十左エ門が言う。
「どうだアカの肉はまずかったろう。」と。

 年老いたものはどんな死に方をしようとどうでもよいこと。そしてエピソード。最後の「肉はまずかったろう。」の3つが、実にうまく共鳴しあっていて、物語に滋味を与えている。

 鮮やかだと感服せざるを得ない。

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| 古本読書日記 | 15:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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