FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

三島由紀夫    「美しい星」(新潮文庫)

 書店で新装版になってこの本が平積みされていた。どうして今頃再販されるのだろうか。三島にはもっと有名な作品があるのに。驚いたことに、この作品が来年公開で映画化されるのだそうだ。それに合わせて、新装版になり書店で売られているということがわかった。

 この作品、表面的にはSF小説の形態をとっているが、実際の本では、絶対これが宇宙人であるという確信的な人が登場するわけでなく、むしろ、宇宙からみたら、地球全体はどのように見え、人類、地球はどうあるべきかを論じた、哲学的小説である。

 また、この小説が書かれた昭和37年は、東西冷戦のなか、アメリカ、ソ連が核開発競争にしのぎを削り、頻繁に核実験が行われ、放射能が拡散し、規制値の何倍もの放射能が、世界各地で計測された。今の方が核の恐怖は高まってしるかもしれないが、当時の方が圧倒的に核の恐ろしさが世界に蔓延していた。

 それまでの戦争は、戦争する場所に多くの武器を持ち込んで戦う局地戦だった。しかし今の戦争は、ボタン一つ押せば、核爆弾を同時に世界中へばらまいて爆発させ、世界全体を破滅させるように変わった。狂った人が最強権力者となり、ボタンを押せば、世界の人々が等しく、一斉にこの世から滅亡する時代になった。

 この物語の主題は、火星からやってきた(と信じている)大杉重一郎と太陽系の星からやってきたとされる彼の家族たちと、白鳥座61番星からやってきた羽黒助教授をはじめとした3人とが今後の人類、地球をどうすべきかという論争にある。

 どちらの考えにも、37年当時流行っていて、三島もその影響を受けているアナーキー、虚無が貫く。

 羽黒助教授は人間は不完全で気まぐれで危険な存在だから、地球を守るために、水爆により一気に滅亡させるべきと主張する。一方、重一郎は不完全で気まぐれだから人間は美しいとして、人間は守られるべきとして和平を希求する。

 両者の論争は平行線をたどり結論はでない。しかし、どうころんでも人間は滅亡する運命にあり、そうならば、今この瞬間に安楽死したほうがよいという羽黒助教授の考えが三島の考えなのではないかとこの作品からは感じられる。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 15:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT