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垣根涼介    「迷子の王様」(新潮文庫)

 過労死が社会問題化している。100時間、150時間の残業が当たり前の企業がある。そんなに必要な仕事があるのだろうか。本当に人手を増やせば、残業は無くなるのだろうか。

 今は、仕事の形態が大きく変わってきた。事務を中心とした人手がいる仕事は、殆どはコンピュータが行うようになった。わずかに残る人手がいる作業は、外部の会社に委託したり、事務専門の子会社を作り、本体から切り離しコストを抑えようと会社はするようになった。

 すると、会社で中心な仕事は、企画、業務や工程の改革、顧客にも、単なる物品を販売するのではなく、ソリューションとかプロセス改革を提案して付随して物品を販売するように変わった。

 変革の創造、提案とその訴求力が会社の最も重要な業務となった。

 変革の創造、訴求力のある提案なんてことは、努力だけではできるものではない。すると、仕事は、価値ある提案を追い求めて際限がなくなる。どこまでやったら、満足できる仕事になるのかわからなくなる。勢い上司も、鋭い提案がしょっちゅう上がってくるわけではないから、どこまで体を酷使して頑張っているかが、部下の評価につながる。

 だから、際限のない労働が巷にあふれる。

 そして合わせて、こんな世界を生き抜くための必須条件として、自分の想い考えを臆面もなく発言できる人、プレゼンが上手な人間だけが評価される。気おくれして、物の言えない、引っ込み思案なひとは捨てられてしまう。

 引っ込み思案な人は本と似ている。本は帯などによって自分を表現をしているが、全くといっていいくらい自分のことを主張できない。とにかく、お客に手にとってもらい、購入し読んでもらわないとその価値を主張できない。最も現代社会から取り残された商品である。

 しかし、読んで手にした価値観が、読者の人生を大きく揺さぶることがある。そして、そういった本は、大切な人生の伴侶となる。20代で、40代で、60代で、繰り返し読まれる。そして、その年代で、違った色合いで読者の心に侵入してくる。

 この作品の香織。引っ込み思案で、他人とうまく会話ができない。それで、読書が人生の支えとなっている。書店に勤めて、個性は存在するだけある無口な本たちと人びとと繋げてあげ、本読む楽しさを伝えたいと頑張る香織に心より拍手をしたい。

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| 古本読書日記 | 15:51 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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