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村田沙耶香    「タダイマトビラ」(新潮文庫)

 家庭的香りが何一つない家に育った主人公恵奈は、自分の部屋のカーテンにニナオと名前をつけ、ニナオに包まれ自慰行為にふけりながら思う。このニナオにある扉をあければ、そこには本当の恋や本当の家族がある。その扉を開けて本当の世界に行きたいと。

 で、高校生の今、恵奈は3つの家を行き来している。

 一つは、何のために一緒に暮らすのかわからない我が家。それから、恋人である大学生浩平のアパート。浩平からは、結婚しようとせがまれている。それから、大きな一軒家で一人暮らしをしている渚さんの家。渚さんは家の一階をオープンハウスにして色んな人たちに開放している。ただし、渚さんは人の声が嫌い。だから、絶対会話をしてはいけないことがオープンハウスで過ごす条件。

 渚さんの家では、アリスというアリを飼っている。渚さんはアリスは18歳だという。恵奈の生まれる前から生きているということか。そんなことはない。アリは数か月で死んでしまう。すぐに死んだときのアリスに似ているアリを探してきてまたアリスと名付けて飼う。

 アリスは次々その生を受け継がれて永遠に生きる。
そのアリスを見ながら、自分の無価値な家族生活、意味なく悩み苦しむ恋愛。本当の家族、恋愛など無いのではないかと思う。
 家族やそれにつながる恋愛など、脳が後から創り上げた幻影にすぎないと確信する。
それは脳が作り上げたシステムに過ぎない。

 カーテン、ニナオの扉の向こうにあるのはそんなシステムができる前のアリスの世界がある。ニナオのカーテンの扉を恵奈は渡る。アリスと同じになった恵奈は、次の生まれてくる恵奈に生を引き継ぎ、永遠にアリスという人間世界を生きるようになる。

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| 古本読書日記 | 16:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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