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大槻ケンヂ   「ロコ!思うままに」(角川文庫)

 短編集。

 主人公は妻と幼子桃太を亡くしてしまっている。世の中に絶望して、死ぬことでしか楽になることはないと思って、家をでて街を歩いている。

 死のうと思って歩いていると、ゲームセンターから「助けて、ここから出して」という声が聞こえた。UFOキャッチャーの中の赤子と同じくらいの大きさの黄色い子熊のぬいぐるみと目があった。こいつがさけんでいるのだ。主人公は、こいつを助け出さなくてはと強く思った。だからUFOキャッチャーに挑戦した。しかし、何度挑戦してもうまくいかない。もう1万円以上使っている。

 「あきらめるな。」とぬいぐるみが主人公をみつめる。そこで、思いをこめて挑戦する。
今度こそいけると思ったらキャッチャーのアームからするりと落ちる。頭へきて機械をくりかえし叩く。
 とうとう、見かねた、やくざ風の店長が機械を開けて、持ってきなと渡してくれた。

 マンションにギュっと抱きしめて連れてかえり、桃次郎と名付けて、一緒に寝る。
この桃次郎が喋る。「パパさん。死んじゃだめだよ。」と。

 そして、翌朝天気のいい日だ。桃次郎がねだる。
「鎌倉に連れてってよ」と。主人公は逡巡する。「みんなに狂っていると思われるよ。」「だからいいんだよ。あの二人狂っていると思われるから、誰も寄り付かない。二人だけでのんびりできるじゃない。」

 それで、主人公は了解して、2人で外へでる。街の人は、主人公が気が違って、腹話術をやっていると思い、誰もが2人を避けて道をあけてくれる。モーゼの十戒のようである。

 北鎌倉で電車を降りる。たくさんの人がいる。みんな気味悪がって近付いてこないが、一人の美しい老婆がやってきて、桃次郎の頭をやさしくなでる。「名前は?桃次郎。可愛い名前ね。私にもテディベアがいるの。美香っていうの。ちゃんと私とおしゃべりするのよ。」と。

 大仏やいろんなところを回り、やがて夕方2人は海辺にくる。すると、桃次郎が言う。
「パパさんとお別れしなくちゃならないの。」

 実は、桃次郎は海綿宇宙生命体で、自分の星が破壊し、宇宙で新しく住む星を探していた。
タイのぬいぐるみ工場で、桃次郎のぬいぐるみの綿となって住み付き、日本に送られ、あのゲームセンターに入れられていた。

 誰か優しい人に地球を去る前に出合いたいと念じていたら、主人公に出合い、なんとしても、この人に拾われたいと機械の中で思っていた。幸せな一日だった。

 夕焼けの江の島の海にお椀のような物体が空に浮かんでいる。そこに、幾つかの綿の生命体が集まってくる。すると機械からアームがでてきて、綿を掴んでお椀にひろいあげる。
 なかなか、桃次郎を掬えなかったが、何とか掬ってお椀にいれてあげる。

 小さい女の子は、たくさんのぬいぐるみに埋もれて暮らす。そして、いつも抱きながら話をしている。あれは、一人芝居でも、独り言でもない。私たちには聞こえないが、ちゃんとぬいぐるみとお話をしているのだ。

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| 古本読書日記 | 16:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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