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岸本葉子   「幸せな朝寝坊」(文春文庫)

 今では考えられないのだが、私が会社に入社した40年以上前では、女性は4年制大学に行くと就職が難しい時代だった。だから、高卒、短大卒の人が多かった。

 入社試験でも、女性だけ集められた。そして、面接官が真っ先に聞くことが
 「結婚しても仕事は続けますか。」だった。会社にはいることが社会にでることとイコールの時代だった。

 岸本さんは、学生をおりて保険会社に就職した。学生最後、みんなは海外へと卒業旅行にでかけたが、自分はお金がなく、ずっとアパートにいて、就職奮闘記を書いていた。それを会社に入って一年目で、朝日新聞にもちこみ、3年後に本となって出版された。

 すると、会社のあちこちから、声がかけられるようになった。だいたいは、中年になろうとしている男性だった。
 「読んだよ。」ここからが、会社員である男の独特な言い回しになる。
 「僕も書くという方面についてはまんざら関心のないほうでもないから、君にとってよけいなことかもしれないが、あえて言わせてもらうとね、はっきり言って、ああいうのは本ではない。それともああいうのこそ本になる時代なのかねえ。・・・・・僕にも、書こうと思ったことはあった。学生の頃だけどね。
 僕の気持ちは会社からとうに離れてしまっている。・・・もっと違った人生があったと思う。」

 そして延々と学生の頃書こうとした物語を喋る。

 こういった自称元文学青年で会社とは距離をおいているのか、会社が距離をおいているのかわからない人がたくさん近寄ってきたのだ。

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| 古本読書日記 | 15:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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