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松尾由美    「雨の日のきみに恋をして」(双葉文庫)

 本屋に行って、新刊文庫の場所にこの本を見つけて、久しぶりの好きな松尾さんの作品だと思って、すぐ手にとって買ってきた。松尾さんと言えば人気作家に押し上げた「雨恋」の作者である。幽霊である千波とのはかない恋の物語が今でも心に残っている。
 で、早速読み始める。何、この本あの「雨恋」じゃないか。思わず、表紙を見つめなおしてみる。するとタイトルの「雨」と「恋」の文字がわざわざ赤字にしてある。まいったなあ。

 こういうことはやってほしくはなかった。
 悔しいし、お金を払った分、取り返したくて再読した。

 今読み返すと、やや中身、当時は斬新に思えたが、平凡かなという印象。

 主人公の渉が入居したマンションの部屋に、この部屋で3年前自殺に見せかけ殺されてしまったという千波という幽霊がでてくる。しかし、姿は見えず、声だけがする。自殺として処理されたのだが、自分は殺された。このままでは成仏できない。何としても犯人を突き止めてほしいと渉にお願いする。千波は変わっていて、雨の日にしか現れない。現れるところは彼女が亡くなった場所。

 この物語が楽しく優れているのは、千波の残された写真がなく、顔がわからないのだが、当時捜査にあたっていた若手刑事が本当に可愛くて自分のアイドルのように考えていたこと。それが、読者にどんな子なのだろうといやがうえにも心が高ぶってくるように物語を展開させているところ。

 更に、渉が真相に近付くにつれ、足だけが見え、もう一歩のところまでくると顔以外すべてが見えるようになる。しかし、ここからが遠い。なかなか真相に到達しなく、読者をいらいらさせる。しかし、一方読者は、真相がわかり、全身が見えるようになるということは、千波は、幽霊ではなくなりあの世に行ってしまうことを知っている。だから、真相がわからない状態でも読者は心地よい。

 真相がわかったとき、千波は即消失するというような、すげない小説に松尾さんはしていない。ちゃんと朝まで千波と渉は抱き合ってすごせるようにしている。そして朝の光のなかで千波はだんだん消失してゆく。この終わり方が哀切この上なく、印象深く読者に残る。

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| 古本読書日記 | 15:53 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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