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小路幸也    「わたしとトムおじさん」(朝日文庫)

 この物語の「初めての旅」の章に、10歳の学校になじめない帰国子女でハーフの帆奈と、孤児児童施設に入っている恭一が、トムおじさんの指示をあおぎながら、旧西洋館においてあった壊れたストリートオルガンを分解修理する場面がある。

 帆奈と恭一がオルガンを分解してゆく。再生できるように部品と元のオルガンの形を写真にとりながら。そして、2人は、その部品の点数の膨大な数に驚く。

 時々、とても不思議に思うことがある。管楽器や弦楽器は、音楽の進歩に従って作られてきたことは想像できるが、ピアノは誰が必要として、なぜ作られたのかと。ピアノは部品点数だけでも8000個もある。

 18世紀初めに発明されたそうだ。このピアノを発明した人は、ピアノが完成したときにどんな音を奏でて、どんな役割を担うのか想像できたのだろうか。8000もの部品を加工しながら作り、組み合わせ、形にしてゆく。奏でる音や音色もバラバラだったりして、試行錯誤にとてつもない時間を要して完成しただろうことは想像できる。

 更に驚くことは、8000の部品が、それぞれ個性が異なり、それぞれが共鳴、共存してピアノの奥深い音色が実現することである。ひとつとして無駄のものは無いのである。

 この物語には、その個性故に、社会や学校からはじき出された人々が登場し、そうした環境に置かれた彼らが、協力しあい、人間として成長してゆく姿を描く。

 小路さんは、ピアノの部品のように、豊かな人間社会を築くためには、人間に価値のない不要な人間はいない。更に、個性の違う人間が、他人を尊重して、協力しあえば、美しい音楽を奏でることができるような社会ができることをこの作品で言おうとしている。

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| 古本読書日記 | 14:42 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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