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森沢明夫    「津軽百年食堂」(小学館文庫)

 この前、近くの外科医院が廃業した。たくさんの患者を抱えていた。経営が不調というわけではない。継ぐ人がいないのだ。シャッター商店街というのが田舎の町にはたくさんある。もちろん、人通りが少なくなって経営できずに止める商店もあるだろうが、かなり多くは跡取りになる人がいなくて店じまいをする。

 この作品は、弘前の老舗ソバ屋の長男と、同じ弘前のりんご農家の一人娘の話だ。

 どちらも、高校を卒業して東京にでてきている。長男である大森陽一は東京産業社というイベント会社に派遣されている社員。イベント会場でピエロ姿になりバルーンアートを演じている。一方、リンゴ農家の一人娘深沢七海はプロの写真家を目指し、厳しい師匠のもと修行中。

 東京は、若ければ、今が苦しい生活をしていても、たくさんの可能性が開かれている。
活躍場所は都会にはたくさんあるし、その場所も日本全国、世界にも開かれている。いろんな職種、自立経営者の可能性もある。

 もし、ソバ屋を継ぐことを決断すれば、生活のためのお金は稼ぐことができるかもしれないが、一気の世界へ広がるような可能性は閉ざされ、同じ場所で近所の人とつきあい、同じ毎日の繰り返しで一生を送ることになる。

 一方、写真家の卵は、もうひと踏ん張りで、プロの写真家になれそうなところまできている。ここで、実家に帰るのではあまりにも切ない。

 こんな2人が、東京で偶然知り合い、恋愛に落ちる。互いに本質的問題を抱えているのだが、先送りしながら、恋愛を深めてゆく。

 しかし、どこかで、互いにこの問題にぶつからざるを得ない。そして、ぶつかって2人は荒波に揺さぶられる。

 ソバ屋の長男陽一は、ソバ屋を継ぐことを決断する。七海はカメラマンとして生きてゆく。
それで2人は、長距離恋愛を添い遂げるまで続けることを決意するところで物語は終わる。

 作者森沢、2人は強い愛で結ばれ、将来幸せになることをこの作品で予感させているが、現実にはハードルは高いと思えてしまう。

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| 古本読書日記 | 16:00 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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