FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

本多孝好     「WILL」(集英社文庫)

 本多のベストセラーとなった「MOMENT」の姉妹本。短編連作となっている。

 収録されている「爪痕」に「WILL」について意味が記載されている。

 リビング ウィルという言葉がある。死が迫っている患者が、まだ判断能力のあるうちに、どういう治療をして、死をどうむかえるか書面にしておくことを言う。

 「WILL」というのは意志である。意志というのは未来をどうするかということと同意味。だから「WILL」は未来と同じことを指す。

 佐伯という船舶会社の部長だった男が死亡する。主人公の森野が営む小さな葬儀店で、葬儀が行われた。

 それからしばらくして牧瀬裕子と名乗る女性がやってきて、佐伯の葬儀をもう一度してほしいと依頼がある。それはできないと断った森野。気になってどういうことか調べる。実は牧瀬は、佐伯の愛人だった。更に驚くことに牧瀬は佐伯との関係に悩み、自らの手に刃物を刺し傷つけ、病院に佐伯が亡くなったときには入院していた。しかも、佐伯が亡くなったことを知った直後、病院を抜け出て自殺していた。つまり、すでに亡くなっていた人が、森野を訪れ葬儀依頼をしていたのである。

 死んだ人が、葬儀依頼などできるわけがない。更に森野が調べてゆくと、牧瀬が入院していた病院の事務員橋口が牧野をかたって葬儀依頼にきたことを知る。

 橋口は、牧瀬のベッド脇で、入院の保証人を誰にするか、牧瀬に迫った。牧瀬は身よりが誰もいなかった。だから「いない」と言うしかなかった。

 橋口も牧瀬とほぼ同い年で、孤独で似たような境遇だった。牧瀬が孤独な死を選択する。橋口は自分に重ね合わせて牧瀬がかわいそうで不憫で仕方なかった。だから愛していた人の葬儀を牧瀬が喪主でしてあげたかった。

 都会の暗い闇、せつなさがひしひしと迫ってくる作品だった。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ


| 古本読書日記 | 17:05 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT