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浅田次郎    「ライムライト」(集英社文庫)

チャップリンが初来日したのは1932年5月14日。翌日の5月15日には犬養首相が暗殺される5.15事件が発生した。この事件と、チャップリンの訪日をくっつけて浅田が物語を作る。この発想力が素晴らしい。しかも、物語を読むと、本当にこんなことがあったのではと読者に思わせる、文章が持つ臨場感に圧倒される。

 5月14日神戸港につき上陸したチャップリンは翌日、東京へ移動、帝国ホテルに宿泊。その夜、夕食を犬養首相と官邸で行うことになっていた。当時は、軍部の一部にアメリカとの戦争をすべきという主張する者がいたが、無謀ということで犬養首相をはじめとする政府に抑えられていて、不満が鬱積していた。

 そこで、鬱積者たちは、夕食会になだれこんで、犬養首相のみならず超一流米国スターのチャップリンを殺害すれば、日米開戦が実現できると考え、それを実行しようとした。

 この謀反行動を事前に察知していた白井検事が、夜盗安吉一家にチャップリン暗殺を防ぐように依頼する。そこで、変身の達人、百面相の常次郎がチャップリンに変装して、官邸に向かう。犬養首相は暗殺されるが、チャップリンは難を逃れる。

 この過程が実に生き生きと目の前に展開するように流れる。

更にとどめ。常次郎が官邸に行っているとき、本物のチャップリンはどうしていたのか。相撲を見学。その後浅草の映画館帝国館にゆく。

 実は理由はわからないが、名作「街の灯」は1931年に全世界公開されているが日本公開は1934年。この当時は未公開だった。

 帝国館の娘映子は10歳で、チャップリンの大ファン。お父さんは満州に応召されてひとりぼっち。そのチャップリンが帝国館にやってきて、たった一人の観客映子のためにパントマイムをしてくれる。舞台から降りてきて、一輪の花を映子にプレゼントする。それはまだ見ぬ「街の灯」の最後の感動シーンのように。

 ここまで盛り上げて最後に浅田は強烈なユーモアを放って物語をしめくくる。

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