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辻村深月     「島はぼくらと」(講談社文庫)

 瀬戸内海にある冴島、人口3000人。この島、常識から言えば、典型的な老人だらけの過疎の島ということになるのだが、大矢村長の力や、コンサルタントのヨシノの活躍もあり外に向かって開かれた島になっていて、人口が増加している。住みやすい、楽しい島として。そして、シングルマザーにも優しい島として宣伝が行き届いていて、脱都会派の人が新たに住みついているのである。

 村長とヨシノのアイデアで、地元の主婦を集めた「サエジマ」という食品会社も成功していて、シングルマザーの受け皿になっている。男の人がやってきても、漁師のアルバイトがあったり、ネットの普及により、島でも暮らしが成立する環境も整ってきている。

 一方、開かれている表の面もあれば、強固な変わらない面もある。男はある年になれば、別の男と兄弟の契りを交わし、実際の兄弟より、強いきずなで結ばれる。しかし、Iターンの人たちにはこの絆を結ぶことが困難で、実際には島の生活の深いところで弾かれてしまう。女性たちもこの地縁に拘束される。特にシングルマザーで島にやってくると、この地縁の観念から、嫌悪感をもって接せられてしまう。

 4人の高校同級生が主人公として登場する。島には高校がないから、フェリーで本土の高校にいつも一緒に通っている。

 島の表面と裏面が、ぶつかり合って、色んな問題が起きる。今までの辻村作品なら、主人公の4人が、ひたすら情熱を持って問題にあたり、苦労しながら解決してゆく物語となるのだが、この作品では、そうにはならず、4人の高校生が、問題に巻き込まれ、振り回され、時には解決を阻害するようなこともしてしまう。等身大の高校生を通して、過疎、島が抱えている問題を生き生きと活写する。そのどれもが、解決が難しい。そのことを読者に重く感じさせる。

 4人の高校生の一人、衣花は、網元の娘。網元の娘は島で一生を暮らさねばならない決まりになっている。島の高校生は卒業すると、島を去る。島を去れば2度と島には帰ってこない。

 島はいつも「行ってらっしゃい。さようなら」と見送るばかり。寂しい。
いつか「お帰りなさい」が言える島になってほしいと衣花は思っている。

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| 古本読書日記 | 16:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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