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原宏一   「ヴルスト!ヴルスト!ヴルスト!」(光文社文庫)

 主人公の勇人は高校を中退して、中華料理店に勤めたが、そこを追い出される。それと同時に恋人だった早苗に「だめな人」と烙印を押され、ふられる。そこで一念発起し、昔でいう大学入試検定試験をうけるべく、ぼろいアパートの2階の部屋を借り受験勉強に打ち込もうとする。

 ところがそのボロアパートの一階の住人髭面のおやじである伸太郎が、ヴルスト(ソーセージ)開発に没頭する変人だった。
 勇人が、中途半端な生き方から脱却を目指し勉強に奮闘しようとしているのに、すべてに伸太郎が邪魔をする。喧嘩をしたり文句を言っているうちに、伸太郎にもせがまれ、勇人は伸太郎のヴルスト開発に巻き込まれるようになる。

 19歳の勇人が、どうして伸太郎のヴルスト開発に勉強がありながら一緒に開発をしたのか。
その勇人の心境が作品で語られている。
 「なぜここまで入れ込んでしまったのか、その理由は自分でもよくわからない。
  ただ、もともと勇人は、大人というのは、もっと立派で、もっとちゃんとしたものだとおもっていた。なのに、伸太郎ときたら、還暦近くまで歳を重ねていても十九の勇人と同じように、怒ったり泣いたり迷ったり意地になったりしている。そればかりか、まるで子供のごとく、法螺を吹いたり、見栄をはったりして懸命に生きている。要するに大人なんて、ちっとも立派ではないし、ちゃんとしてもいない。そこに大検に光明が見えた余裕も加わり、つい本気に介入したくなった。」

 男の中年の姿をよく表している。家庭を顧みず、家族をふりまわし、嘘とまでは言わないが、ちょっとした実績を100倍も膨らまし、俺は偉いと喧伝する。それなのに、いつのまにか会社では不要と言われ、リストラ路線にのり会社を追っ払われる。
 それでも俺はできると、とんでもないことをおっぱじめる。愛想をつかし妻や子供に逃げられる。

 それでも伸太郎のヴルスト開発への情熱は半端でなかった。その半端でない背景がだんだん物語の進行につれ明かされてくる。

 原はヴルスト造りを物凄く研究し調査しつくしている。そのかけた情熱がこの作品に込められている。いつもの原だと、アイデアがボっとでてそれが急に萎んで竜頭蛇尾の作品になるのだが、めずらしく最後まで息切れせずに完走している。

 伸太郎が最後に特上のヴルストを完成したように、原のヴルストへかけた情熱が作品に全編に漲っている。

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| 古本読書日記 | 16:06 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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