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今野敏   「警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル」(講談社文庫)

 大学医学部の医局でトップにたつ主任教授の権力は想像以上に大きい。その大学のみならず、大学が医者を送り込んでいる全国の病院の人事権を一手に握っている。それは、好きなように医者を異動させることができるばかりでなく、その組織から気にいらなければ医者を放り出す、すなわち馘首することも簡単にできる。

 この主任教授の配下に教授がいる。そこから准教授、講師がいて、その下に肩書の無い医師がいて、そのまた下に研修医がいる。大学教授は何かを研究し論文を学会に発表しなければならないが、主任教授は全て教授に研究させ論文を書かせ、自分の名前で発表する。

 研修医というのも簡単になれるわけではないようだ。研修医の報酬はおよそ30000円/月。これでとことんこき使わされる。30000円では生活できないから、アルバイトで病院をかけもちする研修医がでてくる。これでは、肉体的、精神的にも大変になる。そこで、医局で研修医になれるのは、医者の息子とか大金持ちの息子になる。アルバイトを掛け持ちしなければいけない研修医は敬遠されるのである。

 今や大学病院は、研究成果や名声のためにだけ存在し、患者の病気を治すことは二の次になっている。
 驚くことに政治家と同じように医者は護られていて、カルテを改ざんしても罪にはならない。もちろん過誤診療も罪に問われることはない。

 この作品は、大学病院の在り方への不満を抱えている関係者の良心的な気持ちが、守られている医療行為のわずかなすきまををついて、大学病院の医者を逮捕にまでもってゆく。そこの鋭さが鮮やかに描かれる。医局の道からはじかれた科学特捜班メンバー法医学専門の赤城の活躍が作品のあらゆる場面で飛び跳ねる。

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| 古本読書日記 | 16:34 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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