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川村元気   「世界から猫が消えたなら」(小学館文庫)

 余命幾許もないと宣言された主人公の前に、悪魔が現れて、この世で何かを一つ消したなら余命が一日延びると言われ、毎日、主人公が一つ何かを消してゆく。

 電話、映画、時計を消してゆく。

 電話を消したときの思いが面白い。今は、携帯で例えば恋人同士は常につながっている。だから、相手のことを考えたり、思ったりすることが殆ど無い。この世から電話が消えると、手紙でのやりとりしか相手とつながる手段がなくなる。懸命に自分のこと、相手のことを考え思いながら手紙を書く。そして、相手から返事がくるまで、相手がどう思うだろうか、相手も自分のことを好きだろうかと恋人のことを思う。あるいは、待ち合わせ場所に相手が来ない。ここでも、相手のことをどうしたのだろうと懸命に考える。電話が無くなると、本当に相手のことを愛していることを知ることができる。

 電話も、時計も、映画も無くすることができた主人公。

 一緒に生きてきたパートナーである愛する猫キャベツ(名前)を無くすることができなかった。
その時、キャベツは人の言葉をしゃべった。
 「私を無くしてもいいよ。あなたがいなくなった世界で生きていたってしかたないもの。」と。

 そのとき主人公はわかる。キャベツにだってこれからいい主人に恵まれ幸せな生活を送ることができるのに、自分のわがままでそれを摘み取ってはいけないと。それは電話も、時計も、映画も同じこと。みんながそれに頼って生きているのだから、決して無くしてはいけない。

 母が死ぬ前に主人公に書いた手紙が良い。もう死ぬことがわかっている時、死ぬ前に10個何かをしたいのなら何をするか。母は考えられない。その代わりに、主人公にあなたの素晴らしいところ10個を手紙に書いてあげる。母親というのは素晴らしいと感じた。

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| 古本読書日記 | 18:00 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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