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南木佳士    「山行記」(文春文庫)

 南木は私と同い年。しかも山国出身。だから、南木の作品を読むと、そうだよなと共感するところばかり。

 例えば、私の生まれ育った村では、登ることを目的にして山に向かうということは殆ど無かった。わらびとりを夢中になってしているうちに山へ登ってしまった、本当に南木が書いている通りであった。それにしても南木が母校の小学校で出演した「課外授業、ようこそ先輩」という番組。南木が小学生の頃は1学年100人以上の生徒がいたが、この番組を撮影したときには19人。私の母校も健在ではあるが、生徒はどのくらいの数になってしまっただろうかと思わず考え込んでしまった。

 南木は、小説を書こうとしたのは、その動機を素直にこの作品で吐露している。南木は勤務医をしながら、小説を書いている。重症患者が毎日のように亡くなってゆく。それをみていて起こる精神的重圧に耐えられなくなって物を書かねばならないと思うようになった。山へ登ることを始めたのは50歳から。それも、この重圧から生じたパニック障害が、山で違った世界にふれ、体と心が一体となることで克服できると感じたから。

 「ハードな山行では、歩いているうちに、ふだんの生活ではある程度把握できていたはずの「わたし」の輪郭が次第におぼろげになってくる。・・・・酷使されたからだは山の気のなかに溶け出してゆく。
 ただ、下界に還らねばならぬ身は無に傾斜してばかりではいられない。溶けたからだを寄せ集め。濃縮、再生し、俗世仕様にもどさねばならない。」

 これが山行記の神髄であり、南木の飾りのない心の中なのかと思う。

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| 古本読書日記 | 16:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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