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今野敏     「果断」(新潮文庫)

 竜崎大森署署長は、まさに警察組織内の池井戸潤の小説で登場する半沢直樹である。半沢ほど颯爽としてはいず、唐変木、変人と言われているだけ、読者には親しみやすいし、シンパシーを感じさせる。

 今回は強盗事件があり、犯人3人が逃亡したのだが、2人は逮捕できたが、1人が「暖菊」という小料理屋にたてこもり、料理屋の主人と妻を人質に立て篭もる。しかも犯人は実弾10発が装填されていると予想される拳銃を所持している。

 この現場で竜崎のもとにSIT/あくまで、人質と犯人を確保する人質事件専門の特殊対応班とSAT/テロなどを対象にして、人質事件場所に突入して、人質確保のために犯人の刺殺もかまわないチームが配備される。そして最後は、SATの現場突入により殺人犯と思われる男が射殺され、人質は無事確保される。

 これで物語が終わるのではなく、実は射殺されたとされていた犯人の銃には弾が一発も入っていなかったことが発覚。人質を殺すことが不可能だった犯人をSATが殺したということで、新聞や人権派弁護士が不当捜査による銃殺だと大騒ぎをする。

 警察庁は、この責任を誰かにとってもらわねばと思い、竜崎がその矛先となる。追いつめられた竜崎が、署員刑事たちとともに、この策略を跳ね返すところが読みどころ。

 元来東大卒のエリートで、事件現場になど足を運ぶことなど絶対しなかった竜崎が、ノンキャリアの署員たちに交わり、人間的に豊かで尊敬できる署長に変化してゆくところが、よく描けている。それから、物語では、竜崎の妻が最も素晴らしい味をだしている。

 原理原則主義で堅物で軸がぶれないとみられている竜崎の次の言葉がぐっとくる。

 「俺はいつも揺れ動いてるよ。ただ、迷ったときに、原則を大切にしようと努力しているだけだ。」

 この言葉に竜崎の魅力のすべてが詰まっている。

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| 古本読書日記 | 17:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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