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佐川光晴   「ぼくたちは大人になる」(双葉文庫)

 世の中にはろくでもない大人ばかり。主人公の達大は高校3年生。かれの両親だって、新聞記者で社内の年下の記者と同棲をして家によりつかない。母も出版社に勤め10歳以上年下の男と恋をして週3日しか家に帰ってこない。当然、両親は離婚し、親の決めた路線に従い母に達大は住むことになる。

 担任の清水先生もひどい。学級委員長になった達大と副委員長になった女生徒の土屋に、生徒の出席簿を代行してつけるように指示。自分は美術室の奥にある小部屋でその間煙草を吸っている。驚くことに、この煙草時には、副委員長の土屋と吸っていることもある。

 達大は頭脳優秀で、北海道大学医学部を目指す。そして「早く真の大人になるんだ」と肝に銘じる。

 達大は土屋が好きだ。その土屋をダメにしている清水先生も憎い。更に両親のわがままの犠牲に自分はなっている。そこがやりきれなくて、清水先生を学校から追放するのだと思い衝動的に学校に土屋と清水先生のたばこのことをfaxする。

 このことが、物語の全体を通じて達大を揺さぶる。

 達大は成長して、真の大人になることを目指す。しかし、その大人になるためには、このFAXが重荷になる。このFAXにより、土屋からも、恋人からも人間性を否定される。しかし、三浦という素晴らしい友人を持って、この重荷を超えてゆく。
 そして物語は達大が北海道大学医学部に合格して故郷茅ヶ崎を旅立つところで終了する。

 大人になることが、必ずしも成長することではない今の世がある。しかし、愚直に大人になろうとしている高校生の姿を鮮やかに描く。

 飾り気が無く、等身大の高校生がみずみずしく描かれた素晴らしい小説である。

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| 古本読書日記 | 18:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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