FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

今野敏    「緑」(講談社文庫)

 警察には刑事課に鑑識班があるにも関わらず、新たに科学特捜班通称STが組織された。

 メンバーは百合根をリーダーに5人の班員。この5人がそれぞれ独立独歩の精神が旺盛で班内で一切会話をしない。勝手バラバラ。しかし、この5人それぞれに突出した能力を持っている。

 物語は、ヨーロッパで指揮者としての名声を得た辛島の日本帰国凱旋公演にチャイコフスキーコンクールで栄冠を勝ち取ったバイオリニスト柚木優子を入れて行うコンサートのためのリハーサルで、柚木が使用した1億円のストラディバリが盗まれたことから始まる。

 柚木が宿泊していたホテルからハードケースに入れたバイオリン2つ、一つは「ストラディバリ」もう一つは「ピソロッティ」をリハーサル会場まで運び、ストラディバリを柚木が弾き、それをケースに収め、ホテルまで運び、部屋でケースを開けてみたら、両方とも「ピソロッティ」に変わっていたのである。

 この事実にSTで、異常にクラシック大好きな文書筆跡鑑定担当の青山が疑問を呈する。運び込んだバイオリンは2つなのに、これでは3つあることになる。ストラディバリが欲しいのなら、それを盗むだけでいいのに、何故わざわざ「ピソロッティ」に入れ替えるようなことをしたのか。その余分な「ピソロッティ」はどこから運ばれたのか。

 更に異常な聴覚を持つ結城翠が活躍する。ピアノを習ったのだが、ある鍵盤をおすと、ピアノは全ての弦が実際は共鳴する。通常は鍵盤の押した音しか聞こえないのだが、翠には他の弦が共鳴している音まで聞こえる。ピアノ本体と鍵盤蓋の振動音まで聞こえる。それから嗅覚が異常に発達している「人間嘘発見器」といわれる黒崎。
 この3人がそれぞれの能力を発揮し重ねあって事件を解決する。

 青山は、もともとホテルから持ち出したバイオリンは2つとも「ピソロッティ」ではないかと推理する。翠は、リハーサルで柚木が弾いたバイオリンはストラディバリだったが、柚木が所有していたストラディバリでは無いのではと疑う。そして嘘発見器の黒崎は辛島の話に一つ嘘があると見破る。

 これらが、バラバラなのだが、だんだん物語の進行とともに一つに収斂していて真相があばかれる。ここの物語の運びが感心するほど優れている。更にトリックも奇抜なものでなくありふれて現実的なところも素晴らしい。

 推理小説は、ありふれたトリックを使うことが今は難しくなっているのでその良さが際立っている。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 15:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT