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ロバート・キャパ   「ちょっとピンぼけ」(文春文庫)

 第二次世界大戦でのヨーロッパ戦線の写真家キャパによる従軍記。

 北アフリカ、イタリアナポリ、そして有名なノルマンディー上陸、パリへの入城、ドイツ戦線の前線での記録。戦闘機に乗り、落下傘部隊の降りてゆくところや、自分自身も落下傘にぶらさがって降り、その途中でシャッターをきる。

 写真記者キャパは部隊の後方からゆくのではなく、常に最前線で危険地帯を兵士と共に行動する。やはり圧巻は、ノルマンディー上陸作戦の前線。史上最大の作戦といわれた前線である。

 「突進する二人の蔭に隠れながら、海岸にたどりつくと、私は砂の上に打ち伏した。ドイツ兵はまだふんだんに弾薬を持っていた。いま、わたしの熱烈な願いはしばらくの間でも大地にもぐれたら、ということであった。しかし事態はますます逆に、私の体はますます危険にさらされた。」

そして

「瞬時のあいだにフィルムというフィルムは撮りつくされた。バックに手を伸ばして、新しいフィルムを取り出したが、濡れて、震えている手は、フィルムをだいなしにするばかりで、カメラに入れることはできなかった。」

「フィルムのない空っぽのカメラが手の中で震えていた。予期しない。新たな恐怖が頭のてっぺんから、足のつまさきまでわたしを揺さぶって、顔がゆがんでいくのが自分にも感じられた。」

 本の表紙の写真が、このときの写真。完全にピンボケになっている。それは、恐怖で手が震えながら撮られた写真だからである。

 この作品のすばらしさは、キャパが全く平和とか戦争反対などの思想を述べないことだ。戦争の前線にいる兵士は、そんな思想など微塵も考えないし言わない。ひたすら、命令に従い敵前にとびこんでゆく。キャパが兵士と同じ姿勢を貫き、ひたすらその兵士たちの写真を撮り続ける。そこからにじみ出る兵士の姿が世界の人々の心に強烈に届いたのだと思う。

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| 古本読書日記 | 19:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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