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白石一文     「神秘」(下)(講談社文庫)

 膵臓末期ガン余命一年の宣告を受けた主人公の菊池は、宣告を受けて2年たっても、何の治療もせずに元気で生きている。

 菊池に限らず、人にはメインで流れている人生のほかに別の人生を持っている人が多い。
菊池は出版会社の超一流編集者として常に光り輝く道を疾走してきて、取締役までなり、社長になることも視野にはいっていた。成果もあげただろうし、ライバルとの確執もたくさん経験し、彼らを蹴落として今の地位を築いた。それが、彼の人生のすべてのように思えた。

 一方、彼は気が付かなかったが、陽のあたらない人生のたまり場である飲み屋に寄りかかっていたり、会社ではなく家族、親族を基盤にしている人間関係の中にも菊池は存在していた。

 ガンの宣告があり、メインストリームであった人生を完全に捨てざるを得なかった。明日の栄光を勝ち取るためにすべての競争に打ち勝つという世界から下りた。

 そうなると、よりかかるのは、別の絆である。競争とは無縁の、淀みのある社会が眼前に現れ、そこに自分の身を寄せることになる。

 完全に自分の今までのこれが人生というものを捨てて異なる人間に生まれ変わったのである。この、物語は、心も体も完全に生まれ変わっていく菊池の軌跡を物語にしている。

 ガンというのは、正常細胞が何らかの力で全く異なった細胞に作り替えられることによって起きる。ということは、ガン細胞もまた何らかの別の力により元の細胞に戻ることもありえても不思議ではない。

 物語では、菊池がガンを克服したかどうかはわからないが、少なくても、生き方を全く変えたことによって生き延びたことは示唆している。

 確かにガンは、人生や生き方を完全に変革することで克服できる病気なのかもしれない。

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