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川端康成    「川端康成初恋小説集」(新潮文庫)

 川端の一高時代、小説家を目指しでいた時代は、大正時代で、田山花袋や島崎藤村などの自然主義、私小説ブームだった。川端もその影響を強く受けていた。それで、自らの体験をそのまま描く告白小説を書いていた。

 自分の体験を書くという小説には2通りの方法がある。まったく飾りもなく、想像もほとんどなく、強烈に自らを赤裸々にさらけ出すという小説。それに体験には基付くが、その体験を客体化して、更に空想も挿入して、物語として昇華してゆく小説だ。
 この本に収められている小説は、前者の赤裸々小説である。幾つかは既読だが、こう並べてみると、川端もこんなに赤裸々小説を書いていたのだと少し驚く。

 いわゆる初恋小説として有名な「初代もの」が中心に掲載されている。川端も心の整理ができていないまま、自分の感情を異常に高めようとして、かなり毒々しい小説になっていて、私小説、自然主義の影響があり、文学の香りはまったく無く、読むに堪えない作品ばかりで嫌悪感がわきあがってくる。

 それでも、初代から婚約を破棄され、それに納得しない川端が初代を連れ出そうと岐阜の初代のおじさんの寺まででかけるが、初代が外へ出てこず、完全拒否された場面。雨降りのなか傘をさしたままたたずむ、川端の姿を描いた表現は胸にぐんとくる。川端をもって初めてできる表現である。

 「俊夫(川端)は少年の傘に落ちた冬の雨が、自分の心に落ちる音を瞬間聞いた。」

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| 古本読書日記 | 19:33 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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