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大岡昇平    「来宮心中」(集英社文庫)

不倫、浮気というのは、普通はいろいろあっても、大概はもとの鞘に収まる。多少の不満はあっても、男も女も今の安定した生活場所を壊したくないからである。特に男はそういう傾向が強い。

 まずい不倫は、男と女のどちらかが、または両方とも暮らしに行き詰まっていたり、苦難を抱えている時に、その不幸が互いをひきつけ結びついた不倫である。

 愚痴が更に次の愚痴を呼び、どんどん心が高ぶる。そして、大概自分たちの不幸は、自分たちそれぞれの不甲斐なさにその原因があると思うことはあまりなく、世間がおかしい、悪いからこんなことになってしまったと慰めあうのである。しかし慰めあってどれだけ感情がたかぶっても、苦難が消滅はしない。消滅しないどころか、問題を先送りすればするほど、大きくなりにっちもさっちもいかなくなる。

 そして、甘えがでる。今の自分たちの不幸は世間が悪いのだから、世間が何とかすべきであると。それが、話しているうちに、何とかするとの確信に変わる。
 それで、世間に対して行動する。でも、どうにもならない、ただ世間の冷たさだけが返ってくるだけ。

 それで、面白いのは、この物語にあるように、冷たさを知ると同時に、だんだんお互いの見苦しさが目に付くようになる。それで、2人の距離はどんどんかい離し、逆に憎悪が増してくる。それでも、「もう死のう」「うんいいよ」と軽く言い合った言葉がどんどん重くなり二人におおいかぶさってくる。

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| 古本読書日記 | 20:25 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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